去る4月12日と13日、「第8回ペン・トレーディングin東京」が開催された。場所は恵比寿のイベントスペースEBIS303。 オーガナイザーの森睦さんは萬年筆研究会「WAGNER」の主宰者でもあり、仕事の合間を縫って全国いたるところで年間数十回ものペンクリをこなす超人である。今後も年末までに九州、札幌、名古屋、関西などでペンクリを予定しているそうである。「ペン・トレーディングin東京」は回を重ねるごとに大きくなっており、それに応じて入場者数も確実に増えてきている。今年は昨年と違いゴールデンウィーク前の開催となったが、事前の宣伝が功を奏し、述べ入場者数も昨年よりかなり上回ったようである。広報の海老沢さんによると、初日だけでも150を越し、2日目も80と、そこそこの人数を集客、2日間の延べ人数は200を優に超えた。
ここで会場の様子をおおまかに説明しておこう。入り口の受付テーブルにはワーグナー特製の「WAGNER INK」が置いてあった。ペンクリのテーブルは会場正面奥に設置され、左右の壁と手前入り口側の壁に沿って出店者のテーブルがあり、中央には歓談・休憩用のテーブルという設定であった。参考のため出品者とその主要出品物を書いておく。
正面奥の壁側
ペンクリのドクター4人
たこ吉氏
たこ吉氏の万年筆コーナー (新古・中古、ヴィンテージの筆記具、インク、書籍、筆記具周辺グッヅと多彩)
山田氏
志田氏
石原氏
左側の壁
新倉さん(中古・新古パイロット製万年筆あれこれ)
塩見さん(国内外の新古品、限定品万年筆など)
杉本さん夫妻(筆記具周辺の紙モノ、国産メーカー主体のヴィンテージ万年筆)
倉嶋さん(ペンシルの倉嶋さんなのになぜか万年筆が多かった)
鈴木さん(万年筆関連の書籍・雑誌など)
渡辺さん(国産・外国産のヴィンテージ万年筆 / みんなピカピカに輝いていた)
角谷さん(主に外国産限定万年筆など)
木軸創作万年筆・ペン置き(出品者の名前が分りません)
右側の壁から手前の壁
TAKUYAの岡本さん(国内万年筆メーカーとのコラボ商品や新商品など - 革製品)
ユーロボックスの藤井(新古・中古万年筆主体にヴィンテージ品少々)
西川さん(モンブランのハイブリッド商品や竹製オリジナル万年筆)
町井さん(国産、外国産万年筆あれこれ)
ペンクラスターの當間さん(主に1970年前後の外国産ヴィンテージ万年筆が主体)
六善の吉村さん(セルロイド製国産万年筆、硯、万年筆関連書籍など)
11時前には、森さんの合図で一度全員が会場から廊下に出て、それから、出店者が先に入場してそれぞれの持ち場につき開場を待つ。一般来場者は11時の開場時間まで廊下で待つこととなり、我先にと先陣を目指す人たちで行列ができた。どこかで聞いた「行列のできるペントレ」とはこのことか?!
出品者も近年は多士済々でおもしろい。プロは別にして、ペントレに出る売り手の人たち はすべてコレクターであったり筆記具愛好家であるのだから、そこに出品されているものに
はおのずと売り手の個性が出るというのは至極当然のことである。紙ものが好きな人、ヴ ィンテージが好きな人、あるいは、限定ものには目がないという人、そこには「ああ、な
るほどね、さすがだよね」と思わせるモノが並んでいた。
たこ吉氏の万年筆コーナーはやはり人気の的で、2本、3本と手に握りしめて離さない人たちで群がった。もうひとつの目玉はTAKUYAのブックマーカーであったであろう。開場と同時にみんな一斉にTAKUYAのテーブルへ殺到する姿は圧巻だった。入場したらまず最初にあれを手に入れようと決め込んでいたのだろう、そこはすばしこい輩ばかり、みんな目ざとくて抜け目がない。15個限定の500円のブックマーカーは、開場1分くらいですべてTAKUYAマニアの手のひらの中に握られていた。私は隣のテーブルにいてあっけにとられて見ていたが、瞬く間というか、それこそ一瞬の出来事であった。新倉さん、塩見さんのパイロット製品や杉本さんの紙ものもおもしろかった。特に杉本さんの紙ものは人気がありほとんど完売状態とか。角谷さんのコーナーでも高い限定品が売れたようだ。他に目を引いたものとしては六善・吉村さんのセルロイド製万年筆。昭和20年代、30年代の代物だが、いずれもカラフルで見ていて楽しいものばかりだ。セルロイドの工法は職人の腕に頼る部分が多く、複雑な模様は今となってはどのようにして作られたのか分らないという。昔ながらの軸屋さんにはまだ一部の素材が残っているということを耳にしたことがあるが、それらも早晩底をつく。つまり、やがてこのような万年筆は見られなくなるのだ。見かけは高級品というよりも普及品という感じの商品だが(失礼)誰かがこういう筆記具を守り、万年筆文化の一端商品として伝承する必要がある。傾向からいうとむずかしい商品だが、それをあえて扱う吉村さんはすごい人だ。
今回のペンクリは4人が並んで行うという前代未聞のものであったがその光景は壮観だった。噂の「ダメ出し女王」もペリカン#320を持ち込みドクター石原に調整を依頼していたが、やはりというか、完璧主義なのか「こっちが・・・、こうするとちょっと・・・」と、気の知れたよしみで言いたい放題(?)。しかし、そこはドクター石原も手馴れたもの、と思いきや、やはり相手が手ごわかった。案の定、調整は2日間にまたがり、やっと「女王さま」からOKが出た時は会場全体から安堵とともに大きな拍手が沸いた。「女王さま」から晴れて(?)免許皆伝を授かったドクター石原は面目を保つことができ、まずは「ペントレ」でのペンクリ・デビューは無事終了と相成った。
2日目には、「趣味の文具箱」編集長の清水さんのご好意による、インク、書籍などの景品が当たる抽選会があり我も我もと長蛇の列ができた。こういうのは、やはり、ひとつのアクセントであり催しには欠かせないものだ。
2日目の来場数は初日に比べ目減りしたが、逆にペンクリ希望者にとっては待ち時間もなくゆっくりできて良かったのではなかろうか。客の入りはどうしても初日に集中するのはやむをえないが、2日目の集客をいかに高めるかが今後の課題だろう。
いったいどれくらいの筆記具が出品されたのか、興味深かったのでおおざっぱに数えてみたら、なんと、2000本くらいが並んでいた。7−8年前にスイスのSt.Gallenのペンショーに出かけたことがあったが、それとほぼ同じくらいの規模だ。そう考えれば「ペントレ」も結構、さまになってきた。
1−2歳から子供に万年筆を持たせて遊ばせるというくらい、西欧では万年筆に目覚める時期は早いが、我が日本も習字一点張りではなく、なんらかの形で万年筆を使うという環境つくりを考えてはどうだろう。 その意味で「ペントレーディングin東京」が毎年この行事を続けていることは重要なことであり、更にはそれが万年筆業界の底上げに貢献していることは間違いない。業界にとっても後押しとなる重要な発信地である「ペントレーディングin東京」の今後益々の発展を期待したい。
(記・藤井)